2020.9.30
水島中央公園のテニスコート。赤いユニフォームの子どもたちが一球、一球、全力でボールを打ち込む。そのイキイキとした姿は輝いていて、いつまでも練習を見ていたい気持ちにさせてくれる。子どもたちが所属するのは、全国に名を馳せるソフトテニスの強豪・倉敷ジュニアソフトテニスクラブです。
このクラブは、自らもインターハイに出場経験のある橋本恭司監督が、自分の子どもにソフトテニスを教えたいと思ったことがきっかけで、1985年に10人ほどの子どもたちとスタートし、今や多くの全国トップクラスの名選手を輩出するチームへと成長しました。
今年でクラブ設立35周年の節目に、選手たちへの思いや、強さのヒミツについて、話を聞かせていただきました。(リモート取材)
Q1 チームの特徴を教えてください。
クラブのモットーは「もっと強く、もっと楽しく」です。
「もっと強く」という部分では、やる気主義を取り入れ、戦略的プレーの会得ができるように指導しています。「もっと楽しく」という部分では、小学生テニスの原点は遊び。ゼロからスタートする子が多いので、練習に子どもが好きなことを取り入れ、飽きないようにソフトテニスが楽く思えるような工夫をしています。
Q2 園児から小学生までのメンバー構成と伺っていますが、どの子もみんな熱心に取り組む姿が印象的です。どういうことを意識して指導されているのでしょうか?
全国のジュニアの指導者はみんな一生懸命に指導しています。技術的なことは練習をすればいくらでも身につきます。そうなると技術的な差はごく僅かで、私は勝ち負けの差を生んでいるのは“心”だと考えます。ボレーやバックが打てなくても、サーブが入り、レシーブが返せるようになれば、試合に入ってもらい、勝負をする。子どもたちの小さくても“負けたくない”という素直な気持ちを引き出し、その“心”を大切に育て、“やる気”へとつなげます。当クラブでは、練習時のコート分けも技術ではなく、“やる気”でグループ分けしているので、低学年でも第1コートを目指して、頑張る子も多いです。
また、勝つためには子ども自身が練習意図を理解する必要もあります。短い練習時間の中で子どもたちに問いかけることへも多くの時間を割いています。「なぜ」「どうして」など、やり取りを繰り返すことで、子どもたちの「なぜ?」という自分で考える力を伸ばし、自分で気づき、プレーできる選手に成長していきます。はじめは「なぜ?」に答えられなかった子どもたちも経験を積むことで、試合に必要なプレーはなんなのか、しっかりとした返答をするようになります。
Q3 小学生とは思えない多彩なショット、戦略的なプレースタイルが倉敷ジュニアの特徴でもあると思います。このスタイルはどのように出来上がったのでしょう?
全国大会で勝つために試行錯誤してきました。今、全国的に小学生では粘り強くストロークを放って勝負する並行陣が多いです。その中で勝つためには変化のあるショットで、相手を揺さぶる必要があります。いろいろなショットを習得することで選択肢も広がる。ツイストやカットを小学生ができるようになるのは難しいことかもしれませんが、確実に勝つためには会得が必要と考えました。子どもは吸収力があります。だから、どんどんトライさせています。
加えて、前衛の育成にも力を入れています。前衛としても一番大事な感性は小学生のうちから磨かなければいけない。相性もあるし、時間もかかりますが、前衛がいることと多彩なショットを磨くことで戦略的に勝利をつかむことができます。
Q4 普段の練習時間は平均どのくらいですか。(週何日・何時間・場所)
水曜日(17:00~19:00)、土曜日(16:00~18:00)をメインに週2~3日。
主に水島中央公園のテニスコートで行っています。子どもの集中力を考えて、1日2時間の集中型の練習です。休日は練習試合、遠征にも出かけたりして、モチベーションアップや経験につなげています。
Q5 チームとして、競技以外で大切にしていることはありますか。
三位一体の絆を大切にしています。子ども、保護者、指導者の3者が同じ方向を向くことが目標達成につながります。例えば入部してから数年たったころには「どういうふうに育てたい(なりたい)?全国大会に出たい?」なども子ども、保護者とも意思疎通を図っています。学校主体の部活動とは違い、私たちのようにボランティアで成り立っているようなクラブでは、保護者の方が関与する部分も非常に大きいです。お互いが信頼できる関係であることを大切にしています。
また、時には指導者が厳しくアドバイスをすることもありますので、その時には子どもの逃げ場がなくならないよう、保護者の皆さんには家庭では優しい励ましをしていただくようお願いしています。
Q6 卒業後の子どもたちは?
県内外や地元のソフトテニス強豪校に進学する子が多いです。現在の日本代表ナショナルチーム、実業団、高等学校、中学校でも当クラブ出身の選手が多数活躍しています。2011年世界選手権ダブルス金メダル、2013~2014年全日本シングルス選手権連覇の大庭彩加選手をはじめ、各年代で輝かしい成績を残す全国トップクラスの選手(佐藤那帆選手、小林奈央選手ほか多数)が巣立っています。
Q7 チームのPRをお願いします。
随時、メンバーを募集しています。入部テストはありません。入部してから「全国大会に出るようなチームだった。」と知って頂くこともあります。
はじめはみんな何もできないところから始めていますので、ぜひ一度ご家族で見学にお越しください。一生懸命にボールを追いかけて、打ち返している姿をご覧いただければ、すぐに夢中になられると思います。
Q8 最後に今後のチームへの思いを教えてください。
2018年は韓国を訪問し交流試合を、2019年には韓国チームをお招きしての交歓大会を、倉敷市から助成金をいただいて実現することができました。
チームのことを嬉しそうに語る橋本監督から、子どもたちとソフトテニスをいかに愛しているのかが見て取れた。
倉敷ジュニアソフトテニスクラブの皆様、お忙しい中、ご協力ありがとうございました!
今後の活躍を応援しています!
~倉敷ジュニアソフトテニスクラブ~
1985年に創設され、全国トップレベルの選手を多数輩出する国内屈指のジュニアソフトテニスクラブチーム。倉敷市水島地区で活動中。2005年、ソフトテニス全日本小学生選手権、全国中学校大会、全国高等学校総合体育大会(インターハイ)の女子個人優勝ペアすべてが岡山県出身。その6人のうち、5人が同クラブ出身という優れたジュニア育成のシステムを作り上げている。
・主な戦績
全国小学生大会(春全小:第1回~連続出場) 優勝4回、準優勝2回
全日本小学生選手権(夏全小:28回連続出場) 団体優勝5回、準優勝1回、個人優勝6回、準優勝4回